声明】 東京地裁判決を真摯に受けとめ、控訴の断念とともに、
   違憲・違法な通達の廃止、「日の丸・君が代」強制の中止を直ちに求める


 東京都教育委員会が、「日の丸・君が代」を強制する通達を出したことは違憲・違法だとして教職員四百一人が訴えた裁判で、東京地裁は、「日の丸」に向かっての起立と「君が代」斉唱の義務はないとする原告の主張を全面的に認める判決を言い渡した。
 判決は、この通達が教育基本法第十条の「不当な支配」に該当し、教職員には憲法第十九条の思想・良心の自由に基づいて起立・斉唱を拒否する自由があると明確に述べている。第十条が教育行政の暴走に対する歯止めの役割を果たしていることを示した点においても、本判決は画期的といえるものである。
 私たちは、教育基本法の改悪案について、「個々の見識や自主性にゆだねられるべき問題の法律による強制は、内心の自由の侵害はもとより、いま教育現場に痛苦をもたらしている『日の丸・君が代』の強制に根拠を与えることにもなりかねない」として反対してきたが、いみじくもその危険性がいっそう明らかにされた。日本民主主義文学会は、引き続き教育基本法改悪阻止に向けて全力を尽すものである。
 東京都知事で作家でもある石原慎太郎氏は、判決後の記者会見で、「控訴するのは当然だ」と語り、通達に従わなければ「いきなりクビにするわけじゃないけれど、処分は当たり前じゃないですか」と述べている。
 文学創造に携わる私たちは、この国の未来を背負う子どもたちを育むいとなみを、自らの権力支配の下に置こうとする石原氏の姿勢は、人はいかに生きるかを問いかけ、何よりも人間を大切に追求することが求められる、作家本来のあり方とは相容れないものであることを指摘し、強く抗議する。
 東京都は、本判決を真摯に受けとめ、控訴を断念し、違憲・違法な通達の廃止ならびに「日の丸・君が代」の強制を直ちに中止するよう求めるものである。

 二〇〇六年九月二十四日
日本民主主義文学会常任幹事会  



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