声明】 「教育基本法」改悪案と「国民投票法案」の提出に反対する



 自民・公明両党は、今国会にて「教育基本法」改悪の法案を提出しようとしている。同時に、私たちが戦争への道を進むものとして反対してきた「国民投票法案」の国会上程を、民主党との調整によってもくろむなど、九条改憲に向けた条件づくりの動きが急速に強められている。
 「教育基本法」は、戦前の軍国主義教育の深い反省にたって、日本国憲法の理想を「教育の力」によって実現することを格調高く謳った、教育の憲法とも言えるものである。ところが自公改悪案は、「平和を希求する人間の育成」という基本法の前文から「平和」を抜き去り、「正義を希求する人間」と書き換えるばかりか、新設する「教育の目標」においては徳目的な五項目をならべ、「我が国と郷土を愛する」という「愛国心」を盛り込むなど、教育をがんじがらめに縛ろうとする意図を露わに示したものとなっている。
 個々の見識や自主性にゆだねられるべき問題の法律による強制は、内心の自由の侵害はもとより、いま教育現場に痛苦をもたらしている「日の丸・君が代」の強制に根拠を与えることにもなりかねない。また、新たに盛り込む教育行政についての条項は、教育全体に国が大手を振って介入できる仕組みづくりをねらったものに他ならない。
 プロレタリア文学運動の伝統を受け継ぐ私たちは、作品によって反戦を掲げ告発を続けてきた小林多喜二が虐殺され、そして今年没後五十五年を迎えた宮本百合子が、戦時下に数度の検挙を受け、権力の手によって僅かの期間しか発表を許されなかったという過去の歴史を顧みたとき、軍靴の響きが迫るこの国の現在の動きに、重大な関心を抱かざるを得ない。
 私たちは、小林多喜二や宮本百合子らが命を賭して侵略戦争に反対してきた平和への呼びかけを、現代に語りかける警鐘として重く受けとめ、「戦争をする国」づくりのための「教育基本法」改悪案と「国民投票法案」の国会提出に反対するものである。

   二〇〇六年四月二十三日
日本民主主義文学会常任幹事会 



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