「作者と読者の会」 2006年8月 


 八月二十五日(金)、文学会事務所で『民主文学』九月号の作者と読者の会が開かれた。作品は丹羽正明さんの「母の風呂敷包み」と、原恒子さんの「雪催い」。司会は工藤威さん。丹羽さんはこの日、体調がすぐれず、やむなく欠席。
 先ず、風見梢太郎さんから「母の風呂敷包み」について、老いた母親のイメージが強烈に焼きつき、老いてゆく母を放って置けない「私」の心情と重なって、家族というものを考えさせる好編となっているとの報告があった。合評では、時間の経過や、情景がわかりにくいとの指摘があった。しかし、「子供を愛し、頼って生きている様子、約束をしてくれたことがうれしい母親など、母親のこまやかな気持ちの描写は出色である」や、「帰って来られないのに、帰る約束をする『私』。母親は、長男が帰って来ないことはわかっているが、帰ってくると言ってくれたことがうれしいのだ。そこが良い」と評価された。

 「雪催い」について、澤田章子さんから「夫の急死後、生活のために天丼屋を営むようになった六十歳の女性の、孤独だが自分なりの生活と世間との関わりをいつくしんでいる姿を描いたもの」であり、書き出しにもたつきなどがあるが、「庶民的な生活感を描き出すのが上手である」と報告があった。合評では、食材の描写や店の雰囲気が良く出ていて、こういう店があれば行ってみたいという気にさせる、女の生を描くというが素直に書けばこうなるという小説だ、と評価する意見が出された。
 作者の原さんは、テレビのドキュメンタリー番組に魅力あるおばあさんが出てきたのをみて、それが小説にならないかなと考えたのが創作のきっかけとなった、書き出しについてはいつも苦労して結局駄目にしてしまう、と語っていた。 
(仙洞田一彦) 
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