「作者と読者の会」 2006年2月 


 三月号の「作者と読者の会」は二月二十四日午後六時半から文学会事務所で開かれた。対象作品は仙洞田一彦「ダイちゃんの決心」(報告者・能島龍三)、海老根紀子「中華饅頭のぬくもり」(報告者・宮本阿伎)。司会=牛久保建男。参加者十六名であった。
 「ダイちゃんの決心」について報告者は職場の状況と登場人物を紹介したのち、この作品で大事なことは、一見自己本位だと思われている人でもこれでいいのかという思いを抱いている人物像、職場の閉塞状況を脱皮していく力の存在を捉えていることだとし、そのうえで考えてみたいこととして、主人公である大木がなぜ組合に入らずにきたのか、イラク人質事件で目覚めるそのプロセスを描く必要があったのではないか、宇留野課長の過去を語る弁舌は出来過ぎの感がありむしろ彼は苦い思いを抱いているのではないだろうか、と問題提起。参加者からは、職場を描く課題はとても大事でこの作品は基本的権利がなくされていく状況や派遣社員・パートの増大、分社化などまさに今の職場が捉えられている。明解さ、わかりやすさ、ユーモアが仙洞田作品の良さであり失敗を恐れず書き続けてほしいなど多くの意見、感想がだされた。作者は、「島」のように現実に展望を見いだせない状況がある一方で、才能ある人が職場から浮いてしまい組合に入ってくる、これら主体的な人がこれからの運動を作っていくのではないかという思いがある、と述べた。

 「中華饅頭のぬくもり」について報告者は、素直な作風に好感をもったとして物語の進行を状況ごとに解析しつつその段取りの良さを強調、題材の新鮮さと国境・民族・思想を超えて人間の暖かさが伝わってくる作品だと思うと評価。参加者からは、新しい書き手が登場するのが『民主文学』の魅力であり、どうしても書いておきたいという作者の気持ちが伝わってくる作品。作者と「私」の距離が感じられないのに難があるがこのまま終わらせるには惜しい。風俗的なところをどう読むか、この作品はこれでよい、など活発な感想が出された。作者は、「文学学校」に通って初めて書いた作品で仕上げるには百回以上もパソコンに向かって手を入れたとその苦労を話しながら、これからも書き続けていきたいと語った。       
(宮寺清一) 
「作者と読者の会」に戻る


民主主義文学会とは行事案内月刊「民主文学」あゆみ新人賞手塚英孝賞新刊案内民主文学館支部誌・同人誌声明
問い合わせ文学教室創作専科土曜講座山の文学学校文学散歩若い世代の文学カフェ創作通信作者と読者の会リンク