【声明】

憲法改悪の危険な動きに国民的な反撃を


 十月三十一日投開票で行われた総選挙は、市民連合と野党四党との間で野党共通政策が結ばれ、さらに立憲民主党と共産党が政権協力で合意し、多くの小選挙区で候補者を一本化してたたかい政権与党を追い詰めることができた。政権と連合幹部などによる野党共闘破壊の激しい攻撃の中でも、市民と野党の共闘は五十九選挙区で勝利し、他の選挙区でも与党候補に肉薄するなど、共闘効果は発揮され、市民と野党の共闘にとって初の政権交代へのチャレンジとして、大きな歴史的意義があった。しかし、残念ながら選挙の結果は自民・公明政権の継続と維新の躍進というものになった。この選挙結果で見ておかなければならないことは、自民・公明・維新の改憲勢力が引き続き改憲発議に必要な三分の二の議席を維持していることである。

 岸田文雄首相は第二次政権の発足にあたって、自らの任期中に憲法改正の実現を目指す意向を明確にした。また、日本維新の会の松井一郎代表は、開票日の翌日の記者会見で「来年の参院(選挙)までに改正案をかため、参院選と同時に国民投票を実施すべきだ」と改憲の旗振り役を買って出ている。日本維新の会と国民民主党は、衆参両院の憲法審査会を毎週開催することを与党に求め、改憲論議を加速させる方針で一致するなど、危険な動きが出てきている。

 日本維新の会は憲法「改正」項目に教育無償化などを掲げ、公明党は環境保護を「加憲」するなどとしているが、これらは憲法を「改正」することなく、政府にその意思さえあれば十分可能なものである。改憲勢力の真の狙いは、憲法9条の平和主義を破壊し、緊急事態条項を新設するという戦争と人権抑圧を狙いとしたものであることは明らかである。

 戦後の民主主義文学運動は、戦時中の日本文学が侵略戦争に加担したことへの、痛切な反省から出発した。戦後の日本文学もまた、侵略戦争の実相を追求しつつ、文学創造として表現することを重要な主題のひとつとしてきた。
 文学が花開くためには平和と言論の自由は欠かせない。文学は他者への想像力なしにはなりたたず、人間の尊厳を大切にする創造の営みは平和を希求する。
 私たちは日本国憲法の平和と民主主義の精神を守るために、改憲策動に反対するすべての政党・団体・個人と力を合わせてたたかう決意を表明する。


  二〇二一年十二月五日
 日本民主主義文学会第二回幹事会  

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