【声明】

日本学術会議への政治介入に抗議する


菅政権による日本学術会議の新会員任命拒否は、学問の自由をはじめとする国民の基本的人権を侵害するきわめて重大な問題である。さらに国は学術会議の在り方そのものの見直しにまで踏み込もうとしている。これは安倍内閣に代わって登場した菅政権が極めてファッショ的な性格をもつことを表すものである。日本民主主義文学会は、任命しない理由の説明と六人のすみやかな任命と共に、学術会議への政治介入をただちに止めることを強く求めるものである。
 

この任命拒否問題に対しては、九百五十を超える学会や協会、大学人、さらに宗教者、労働組合など多くの団体が抗議声明を出し、それは日々増え続けている。国際学術会議ダヤ・レディー会長が「このことが日本における学問の自由に与える影響をきわめて深刻にとらえています」と梶田隆章会長宛に書簡を送るなど、今回の任命拒否への国際的な批判も高まっている。

そもそも思想・良心の自由や表現の自由、学問の自由は日本国憲法の土台となるものである。日本学術会議は戦前、科学者が戦争に総動員され侵略戦争に加担させられた痛苦の体験から、戦後、学問の自由を掲げた憲法のもとで政府から独立して職務をおこなう「特別の機関」として設立されたものである。政府は広がる国民の批判に対して二転三転と説明を変え支離滅裂の状態になっている。任命拒否について何ら説明のできない政府は、「国の機関の一環である必要があるのか、公務員である必要があるのか」(井上科学技術担当相)と、学術会議そのものを国から切り離そうとしている。これは安倍前政権でも学術会議の在り方を評価していたことにも反する、許しがたい論点ずらしである。

学術会議が大学等の研究機関における軍事研究に対して学問の自由と学術の健全な発展の立場から、軍事研究に協力しない姿勢を示していることが、今回の任命拒否の根本にあることは次第に明らかになってきている。任命を拒否された六人は、安保法制に反対した人々であることは当初から指摘されていた。任命拒否は、学術会議の独立性・自主性への侵害であり、強権を持って異論を排除する専制政治と言わざるを得ない。一九三〇年代、滝川事件、天皇機関説事件など学問への弾圧が国民の言論・表現の自由への圧殺へとつながっていった。思想・良心の自由、表現の自由など憲法に明記された民主的諸権利の擁護発展を基本理念とする日本民主主義文学会は、今回の問題を国民全体に加えられたファッショ的暴挙として断固抗議するものである。

   2020年12月6日            
 日本民主主義文学会第四回幹事会  

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