【声明】
内心と言論の自由を奪う「共謀罪」法案の採決強行に断固抗議する

 政府、与党は、六月十五日朝、多くの国民の懸念と反対の声を押し切り、参議院法務委員会の採決を省略するという暴挙まで行い、異例の徹夜国会によって、「共謀罪」法案の採決を強行した。国会審議の中で、政府の説明が二転三転し、法務大臣すら説明ができないような破たんした法案の審議を、数の力で打ち切り、強行採決により強引に法として成立させたことは国権の最高機関である国会の名を貶める以外の何ものでもない。政府、与党をはじめ、法成立に手を貸したものに、私たちは強く抗議する。
 国内だけでなく、複数の国連関係者が「プライバシーに関する権利と表現の自由への過度の制限につながる可能性がある」「国際組織犯罪防止条約はプライバシーの侵害につながるような捜査手法の導入を求めていない」と法案への懸念を表明したことにも、政府は「一方的」「不適切」と反論するだけで、何の回答もすることができなかった。それは、国際組織犯罪防止条約の締結や「テロ対策」といった立法の必要性に関する政府の説明を根本から崩すものである。
 政府はこの法案には「計画」「組織的犯罪集団」「準備行為」などの要件があるので、市民団体などの活動を制約することはないと説明していたが、答弁の中でその定義は曖昧になり、際限なく広がる危険性をもっている。それは、戦前の治安維持法のように、人びとの一挙手一投足を見張ることで、政府に反対する運動を抑え込むために運用されかねない。しかし、内心と表現の自由は、人類がたたかいとってきた「侵すことのできない永久の権利」として日本国憲法が保障しているものである。安倍政権がいかに人びとを委縮させようとしても、この暴挙への怒りの声は広がらざるをえない。安保法制に反対するたたかいの中で生まれた市民と野党の共同は、さらに大きな広がりをつくることによって、「共謀罪」の廃止を目ざすうねりをつくり出し、人権と民主主義を守り抜くに違いない。
 絶対主義的天皇制下の治安維持法によって、小林多喜二らの文学者が命を奪われ、獄につながれた歴史を、私たち日本民主主義文学会は忘れることはできない。私たちは文学に携わる広範な人たちと「共謀罪」廃止に向けた共同を広げると共に、人権と民主主義に根ざした言葉をより多くの人の胸に届け、「暗黒の時代」を再びもたらさないために力をつくすことを決意する。

     2017年6月15日
 日本民主主義文学会常任幹事会  

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