【声明】
九条破壊の「戦争立法」法案化の中止を求め、
広範な文学者の阻止の協同を呼びかける

 米軍が起こすあらゆる戦争を支援する「戦争立法」の骨格を、自民、公明両党が合意文書でまとめたことにより、安倍政権は五月中旬の法案国会提出を狙っています。この合意文書は、「国際法上の正当性」や「自衛隊員の安全の確保」など海外活動についての「方針」を盛り込み、あたかも「歯止め」を設けたかのように装っています。しかしこれらは、「海外で戦争する国」づくりを推し進める本質を少しも変えていない、危険な「戦争立法」そのものの内容です。
 とりわけ重大なのは、政府の判断により集団的自衛権が行使され、いかなる事態においても米軍支援が可能になることです。私たちは先に、戦後半世紀にわたる国会での論戦を経て定着していた、「憲法九条のもとでは集団的自衛権を行使してはならない」政府見解を覆し、行使容認に踏み切った安倍政権の閣議決定を、「国民の反対の声を無視して強行する、常軌を逸した暴挙」と指摘してきましたが、それを現実のものとする法案提出を加速化させる与党合意は、断じて容認できるものではありません。
 自衛隊はこれまで、のべ約三万人を派兵していますが、一人の戦死者も出さず、一人の外国人も殺さず、殺傷目的の銃弾も発しないできました。憲法の歯止め≠取り払った行き先は、軍事力行使で多数の死者を生みだしている、米、英その他の国の実態が如実に示しています。米国が地球規模で引き起こす、際限のない無法な戦争への参加を日本国民は決して許さないでしょう。
 アジア・太平洋戦争が絶対主義的天皇制と日本軍国主義の敗北で終わったとき、多くの国民は、二度と侵略戦争の悲惨を繰り返してはならないと、平和で民主的な国としての再建を誓い合いました。こうした反省のもとに歩んできた平和国家の在り方が、国際社会で認知されているのは、大きな誇りであると私たちは考えます。
 戦後の日本文学は、侵略戦争に加担したことへの痛苦を出発点に、戦争の実相を追求し、文学創造としての表現を重要な主題のひとつとしてきました。私たちは、九条破壊の「戦争立法」法案化の中止を直ちに求めるとともに、いまこそ広範な文学者が協同し、阻止のための行動に立ち上がることを呼びかけるものです。
 
   二〇一五年三月二十二日
日本民主主義文学会第五回幹事会  

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