【決議】人権、自由、民主主義を求めて

 文学は、自分らしい文章を書くことによって、人間の多様性や個人の尊厳、生命の尊さを表現する宝庫となってきました。ジェンダー平等、LGBTQ(性的少数者)の平等、日本国民のみならず、「外国人」の人権を尊重する社会の実現が喫緊の課題となっている今、文学者の真価が試されています。
 この間、貧困や生活苦から売買春に巻き込まれそうになる若い女性を描く小説が『民主文学』に発表されました。一方で、性暴力にさらされる若い女性を救い出す活動をしてきた民間団体コラボへの東京都からの公的支援が打ち切られる暴挙も起きています。
 DV(家庭内暴力)や虐待、貧困などの苦境にある女性たちを性暴力や性搾取から守るために、国や自治体が公的責任を果たすことが求められています。そうした中、女性のみを処罰対象とする売春防止法(一九五六年制定)の不備を補うものとして、二〇二二年五月十九日、国会で「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」が超党派の議員立法によって全会一致で可決し、成立したことは注目に値します(二〇二四年四月から施行)。ジェンダー差別に苦しめられ、生命を奪われる事態が頻発する中、差別と抑圧を打ち破る新たな人間関係を築く展望を持って創作と批評に取り組もうではありませんか。
在留の「外国人」を脅かす入管法(出入国管理及び難民認定法)改悪も見過ごすことはできません。難民認定が他の先進諸国と比べて認定率が低く、生命や自由が脅かされる恐れがある国への追放・送還を禁じた難民条約にも反しています。入管法の改悪は、「外国人」だけの問題ではありません。文学者が入管法改悪に抗議し、立ち上がっているのは、個人の尊厳を脅かし、人権をおろそかにする社会を許すことができないからです。
 プロレタリア文学作家の小林多喜二を虐殺した特高警察が実務を担ったのが戦前の入管行政でした。「外国人」を取り締まりの対象としか見ない政策が戦後も引き継がれたことは、断じて容認できません。「全件収容主義」の名のもとに、名古屋入管で命を奪われたスリランカ人のウィシュマ・サンダマリさんをめぐる入管の報告書が真実を隠していることは大問題であり、情報公開が求められています。
社会と人間の真実を描く文学者として、ジェンダー平等、多様性と個人の尊厳、人権尊重の社会をもたらす言葉を多くの人々に届けるために、ここに決議します。


 二〇二三年五月十四日
日本民主主義文学会第三十回大会  


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