【決議】 岸田政権による憲法蹂躙の大軍拡に断固反対する

 三十回大会は、「戦争か平和か」がかつてなく鋭く問われる歴史的な岐路のもとでひらかれました。二〇二二年十二月に岸田政権によって閣議決定された安保三文書は、憲法制定後、歴代政権が掲げてきた「専守防衛」を投げ捨て、反撃能力と称する敵基地攻撃を可能にする大軍拡を打ち出しました。さらに、改憲派の一部野党を巻き込んだ憲法改悪への策動も着々と進められています。
創立以来六十年近く、戦争に反対し、平和と民主主義を守る立場から創造と批評を積み上げてきた私たちは、こうした憲法を蹂躙する大軍拡路線に対して、断固として反対であることを大会の意思として表明します。
 大軍拡路線に対して、少なくない文学者が強い関心と危惧を表明しています。作家の中村文則氏は安保三文書について「国の滅亡につながるような閣議決定です」「本当にこれでいいのか、日本が戦争に巻き込まれていいのかと、問題にし続けることが必要です」と危機感を表明しました。また奥泉光氏は、「昭和の『戦前』とは違う、戦争をしないための『戦前』が必要」だと指摘しました。先になくなった大江健三郎氏が、平和と人権という戦後民主主義を文学の根幹とし、九条の会や反原発の活動に取り組んできたことも、日本文学の重要な批判精神の表れです。
 岸田政権がすすめる敵基地攻撃能力の正体は、集団的自衛権行使を可能とした安保法制の下で進められている、長距離ミサイルを中心としたシステムであり、米国の「統合防空ミサイル防衛」に加わることです。自衛隊が米国と一体化して先制攻撃に乗り出せば、当然ながら相手国の反撃を招き、日本を焦土と化すことは明らかです。だからこそ政府は、全国の自衛隊基地が、核攻撃にも耐えられるよう、基地の強靭化計画を進めているのです。
 今、必要なことは、軍事対軍事の競争をあおることではなく、外交の力によって、絶対に戦争を起こさせないことです。すでに東南アジア諸国連合(ASEAN)では、徹底した粘り強い対話の努力を積み重ねることで、この地域を「分断と敵対」から「平和と協力」の地域へと大きく変えてきました。憲法九条を持つ日本こそが、先頭に立って、こうした平和の枠組みを東アジアにも広げていく努力をすべきではないでしょうか。
 私たち日本民主主義文学会は、戦争国家づくりの危険な企てを許さず、平和憲法を守り抜くために、文学者としての使命に立って、世論に働きかけ、平和を願うすべての国民、志を共有するすべての団体・政党と力を合わせたたかう決意をここに表明するものです。 
 
  二〇二三年五月十四日

日本民主主義文学会第三十回大会  


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