心さわぐシニア文学サロン

第18回 団塊の世代が描く戦争  ―― 青木陽子『捕虜収容所』をめぐって

 五月八日(土)の午後二時から、第十八回「心騒ぐシニア文学サロン」がオンラインによって開催された。今回は名古屋市在住の青木陽子さんが民主文学館から刊行した短編小説集をテキストに、「団塊の世代が描く戦争 青木陽子『捕虜収容所』をめぐって」というテーマで議論した。司会は能島龍三さん。記録は東京東部支部の新木輝代さん。報告者は、文芸評論家の乙部宗徳さんと松木新さん。乙部さんは「『団塊の世代』が描く戦争」というタイトルで、北山修、立松和平、村上春樹、能島龍三、青木陽子の言葉を紹介しながら、この世代の戦争に対する思いを論じた。松木さんは、短編集に収められた四つの作品を分析し、また、「『未精算の過去』を書く」というタイトルで、私たちと戦争の関係、調べて書くことの意味などを解明した。
 討論では「青木さんの新境地である」「ドラム缶が空から降ってくる話と、捕虜をお灸で治療する話が非常に印象的であった」「加害責任も視野に入れるべきである。日本の戦争観、捕虜観がどこから来ているのかも考えなければならない」「私たちは、極寒の中、女性を裸にして行軍に連れて行った人たちを親にもつ世代だ」「調べて書くことの大切さがよくわかった」「資料を調べることは大切だが、調べきれないところもある。どこかで思い切って作品化することも必要」などの意見が出された。四つの作品の中では「口三味線」を高く評価する人が多かった。
 作者の青木さんが、「戦争責任、記憶の継承、個別を見つめるなど大きな問題提起をいただいた」と語り、その後新船海三郎さんが「団塊の世代は、戦争を知る最後の世代、伝える責任がある。人の体験を伝えるだけでなく、自分がどう思ったかを伝えていくことが大切だ。文学として書く意味を考えるべきである」など討論のまとめをおこなった。最後に風見から、7月号から青木さんの連載小説が始まる『民主文学』購読の訴えを行って、終了した。
 参加者は四十一人で、そのうち文学会外の人は十二人だった。定期購読者が一人増えた。
            
 (風見梢太郎) 

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