心さわぐシニア文学サロン

第7回 作者と語り合う『雪解け道』の青春
 第七回心さわぐシニア文学サロンは、「作者と語り合う『雪解け道』の青春」と題して、四月二十日午後、東京労働会館地下会議室で行われた。「雪解け道」は、青木陽子さんが「しんぶん赤旗」に二〇〇七年三月十九日から十月十日まで連載した作品。(同名単行本・新日本出版社・2008年1月刊)
 今回のサロンは作者の青木陽子さんの話、風見梢太郎さんの話、新船海三郎さんの話、新船さんと風見さんの意見交換、会場のみなさん全体での討論という順で行われた。司会は櫂悦子さん。
 この会はもと「六〇年代から七〇年代初めに青春を体験した人たちの懇談会」と言った。「雪解け道」は一九六七年から七〇年ころの大学生活を描いているので、そこにすっぽりとおさまる。
青木さんは、「自分の中で決着をつけたい」「(その時代の)総括文書のたたき台になればいい」と語った。風見さんは「(その時代を)生々しく思い出す意味もあるのではないか」と語り、新船さんは「時代に対する批評、現代に対する批評を、書き手がどうするかという大きな問題がある」と指摘。
 全体の討論では、自身の体験に重ね合わせた発言があった。その中で、次のふたつの意見に興味を持った。
ひとつは、「九条の会」の運動の中で、信頼していた人がかつての革マルの闘士だったことが分かった。かつて彼らによって運動に分断、分裂が持ち込まれたが、それは過去の問題ではなく今の問題でもある。
 もうひとつは、自然保護の運動を、過去「全共闘」にいた人も一緒に進めている。紳士的な人だ。
 このふたつの意見がそれぞれに指している個人は知らないし、その個人評価にどうこう言えるわけではないが、四十年という時間を考えさせられる。かつて共産党や民青にいた人でも離れた人がいる。まったく反対側の立場に立ってしまった人もいる。
 変わらなかったものは何か。変わったものは何か。なぜ変わらなかったのか。なぜ変わったのか。そしてその訳は、など様々なことが考えられる。青春時代はそれぞれにとって問題提起の時代かもしれない。青木さんは決着をつけたいと言ったが、サロンに集う者たちも、書き手としての決着を迫られているのではないか。そのはずみになるような役割が、このサロンにはあると感じた。
 参加者は会内外から三十二名。文学会加入を考えるという意見が出るほど盛り上がった。
(仙洞田一彦) 

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