「労働者の現状と文学研究会」 (2012年5月)


   原発労働者の問題を考える  
 
 テーマは〈原発労働者の問題を考える〉。五月十八日、三浦直子弁護士を講師に迎えて十二人が参加。三浦弁護士は、現在日弁連の貧困問題対策本部の一員で、首都圏青年ユニオンの顧問弁護士団にも入っている。日本弁護士連合会編『検証 原発労働』(岩波ブックレット)の中で、「作業員たちが語る原発労働の実態」の執筆者として、原発労働者を取材した中身を語っていただいた。三浦弁護士は、今まで原発労働の実態はよく分かっていなかったが、「3・11」福島原発事故が起きて事故現場に調査に入り、浜岡原発の労働者にも聞き取りを行い、日給十万円で一万円がピンハネされるひどい中間搾取、基準の被曝線量を超える違法労働、放射能管理手帳の改ざんなど、極めて劣悪な働き方をさせられている実態を話された。
 原発労働者は、被曝することに対価が払われているが、短時間でかせいでいるという負い目があり、それを原発企業が利用している。これだけひどい労働条件なのにたたかいが起こらないのは、労働者の「権利意識」がないこともある。さらに、5次まであるといわれる下請け重層構造のため、トップの東京電力にまで責任を追及できない仕組みになっていることなどが指摘された。
 討論では、「取材で原発労働者と接触することが困難である、そこをどう突破するか悩んでいる」「労働組合が声をあげていく必要があるが、原発大国のフランスで労働者はどうしているのか」「原発労働者の家族はどう思っているのか」など、質問も含めていろいろな意見が出された。中でも原発労働というのは、新たな被曝者を生み出しつづけていて、労働者は命を削っているのであり、ここには労働の喜びや誇りというものを見出すことができない。そういう非人間的な労働を強いる原発は、廃止する以外にないことは、改めて確認できたと思う。民主主義文学がこの課題をどう創作、評論で書いていくのか、非常に大きな刺激を受けた研究会となった。 
    
 
   (久野通広)    

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