「近・現代文学研究会」 第115回(2013年6月)


   ナサニエル・ウェスト 「孤独な娘」  
   
 久しぶりの開催となった第一一五回近現代文学研究会は、六月二十一日(金)、文学会事務所で開かれました。参加者は五名と少なめでしたが、北村隆志さんの報告で、ナサニエル・ウェスト「孤独な娘」をテキストにして行なわれました。
 ナサニエル・ウェスト(一九〇三─一九四〇)は、アメリカの作家です。一九三〇年代のアメリカの姿を描き出した作家でした。北村さんは、この作家に触れるきっかけとなったのは、井上ひさしの「組曲虐殺」上演を機に知己を得たロジャー・パルバースさんから勧められた作品がこの「孤独な娘」だったというところから、この作品の報告にはいりました。ウェストは、小説はわずかの作品しか残さないまま交通事故で早く亡くなったのですが、戦後になってから高く評価され、カート・ヴォネガットやトマス・ピンチョンたちにも影響をあたえたのだそうです。
 北村さんは、作品に即して、〈孤独な娘〉と呼ばれる、新聞の身の上相談欄を担当する青年記者の人生の悩みやおのれの存在意義を問い直す作品であり、救いを求めながらもかいけつが見つからない袋小路に陥っている姿を描くことで、当時のアメリカ社会のゆがみを明らかにした作品であるとまとめました。
 その後の議論でも、アメリカ社会のさまざまな側面の一つを描いた作品で、都市生活者の姿をあきらかにしたものだとか、大恐慌の時代の閉塞感がでているとの感想も出されました。
 
 
  (岩渕 剛)     

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