「批評を考える会」 <2016年3月> 


  霜多正次『沖縄島』における創作方法


 創造・批評理論研究会の第四回例会が、三月十八日(金)午後六時三十分より、文学会事務所で行われ、「霜多正次『沖縄島』における創作方法」と題して乙部宗徳さんが報告しました。
 報告では、霜多氏の生涯にふれた後、『沖縄島』とその描いた時代として、一九四五年から一九五八年までの沖縄の出来事の年表を示して、山城清吉、運天栄徳、平良松介という主要な三人の人物が、全十章のそれぞれの場でどのように行動したかを追い、作品世界の全体像が示されました。
 そのうえでこの作品でとられた創作方法として、「横糸」としての沖縄の戦後史と「縦糸」としての沖縄の歴史を重ね合わせることで、総合的に沖縄をとらえようとしている点に新しさがあること、また、人民党員の山城、新興企業家となる運天、教育者である平良の三人の視点で描いたことも、たたかいを含む沖縄の戦後を描くうえで有効な方法であったという指摘もされました。一九七〇年に出された『文学入門』で、霜多氏が多元的視点の必要を強調していることもふれられました。
 参加者からは今回、初めて『沖縄島』を読んだが、なかなか力のこもった作品と感じた、作者が戦後の沖縄に行ったのは、一九五三年だったにもかかわらず、戦後の状況がとらえられている点に感心するという意見も出されました。
 今回の参加者は評論を書く人が四人だけで、創作方法の論議として残念でした。小説の書き手の積極的な参加を呼びかけます。
   (宮本阿伎) 

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