「作者と読者の会」 2026年08月号



                  「作者と読者の会」

 八月号の「作者と読者の会」は、七月三十一日(金)に行われた。取り上げた作品は、倉園沙樹子「潜水兜」と木曽ひかる「終着駅」。参加者は十三人。司会は岩渕剛。

 「潜水兜」は草薙秀一氏が報告をした。草薙氏は最初に小説の概要を説明し、作者が体験していない戦争中の「特攻」作戦にたずさわった若者たちを描いたことに触れ、「軍国日本への憤りがほとばしっている」意欲作であると紹介し、主要な三人の登場人物について報告した。

 参加者からは、「『伏龍』という作戦の存在を初めて知った」「苦悩する青年の姿がよく見える」「当時の時流に流されていく恐ろしさを感じた」「調べて書くのは大変。厳密にいえば、海軍では使われない用語が出てきている」「地名が架空のものにされているが、実際の作戦とは関係ない場所を想像させないか」など意見が出された。作者は「地名は架空のものに変えたが、実際の場所に足を運んで雰囲気をつかむことができた」「当時一世を風靡した、青年に死をあおる思想を提唱した人物は戦後責任をとっていない」とのべた。

 「終着駅」は乙部宗徳氏が報告した。乙部氏は、題材、モチーフ、主題にふれ、時、場所、登場人物、筋などをていねいに説明して、「実際にあった事件をモデルにしたと考えられる場合には、慎重に扱うべきだ。特に、登場人物がかかわった暴力集団の場合は、それが過小評価されてはいないか」と指摘し、また主人公のまわりの人物の描き方が平板にみえる、また、草平とバラ子との関係で「偶然」を使っているのは少し無理があるのではないか、と報告した。

 参加者からは、「登場人物の再生を願う気持ちはよくわかる」「暴力集団のことはよくわからなかった」などの意見や感想が出された。作者は「聞いた話でストーリーをつくったので、暴力集団の描き方には不十分な点があったかもしれない。これから勉強したい」とのべた。

                          (岩渕剛)
   

 
「作者と読者の会」に戻る