「作者と読者の会」 2026年07月号



                  「作者と読者の会」

 七月号の「作者と読者の会」は、六月二十六日(金)に行われた。取り上げた作品は、五十嵐淳「風に立つポプラ」と黒田健司「サロンへようこそ」。参加者は十二人。司会は岩渕剛氏。

 「風に立つポプラ」は原健一氏が報告をした。原氏は最初に小説の概要を説明し、作品の内容について「主人公は三十七歳の会計年度任用の女性職員であるが、文体からも筋運びからも作者と主人公の距離が近く感じられる。それほど作者は主人公を描ききっている。題名がこの短編小説を象徴している。また作品から充実感を感じるのは、同僚の坂口、父親、母親などに優れた描写があるからだろう」と報告した。

 参加者からは、「苦しんでいる労働者に光をあてているすばらしい作品。小説のつくりがいい、重層的で視点の据え方がテーマを深めている」「タイトルと内容が一致していてすがすがしい」「読みやすい作品。文章のわかりやすさ、表現の細やかなところがいい」「主人公の仕事への誇りが書き込まれていればよかった」など意見が出された。作者は「きっかけは労働組合の活動で出会った指導者に感動して、いつか書きたいと思っていた。小説を書くのに、起承転結や伏線をどうおくかなど、細かく考えて書いてきた」とのべた。

 「サロンへようこそ」は仙洞田一彦氏が報告した。仙洞田氏は、時、場所、登場人物、筋などをていねいに説明して、「人種差別、民族分断の雰囲気があおられるなか、こうした繋がりをつくる活動が貴重であり、必要であることがわかりやすく伝えられている。人物像がわかるように書かれ、いきている。構成もよくできている。励ますつもりが、励まされたというのが主題のように読むことができるが、だとすれば、主人公の足の怪我、それによる岩橋彩花との交代がこれでよかったか、一考を要すると思う」と報告した。

 参加者からは、「気持ちよく読めた。妻を亡くした主人公が自分を取り戻し、励まされるのが作品の主題と読めた」「ジュンの変化がよく描けている。彩花が効果的でいきている」「石塚の心の動きがていねいに描かれていていい。若い彩花に作者が託したものは大きいものがあると思った」などの意見や感想が出された。作者は「週一回区民館で中国やベトナムの人たちと交流をしている。とても楽しいもので、その経験から書いてみた。少年の成長と妻を亡くした男の再生をテーマにした。石塚と彩花の役割をどういかすかが一番考えたところ」とのべた。

                          (高野裕治)
   

 
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