■ 「作者と読者の会」 2026年06月号■
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「作者と読者の会」
六月号の「作者と読者の会」は、五月二十九日(金)に行われ、第二十三回新人賞受賞作、佳作の三作品を取り上げた。十八人が参加。司会は岩渕剛氏。
受賞作の冬崎桂「黒へ」は最上裕氏が報告した。最上氏は何を書こうとしたのかについて「改憲されて戦争が近づき、表現の自由まで奪われる社会が訪れようとしていることへの警鐘、抵抗を描こうとしたのではないか」とのべ、「政治と芸術が混淆したエキセントリックな題材をまとめあげた文章力に感服した。希望は見えないが、社会への警鐘としての意味があると思う」と報告した。参加者からは「憲法改悪に対峙する姿勢、それを美と絡めているところがすばらしいと思った。『美しい』という言葉は使いすぎではないかと思う」「刺激的な作品。抵抗を美として追求する中心軸は一貫している。今の時代で読まれるべき作品と思った。もりこみすぎではないかとも思った」などの意見が出された。
作者は「最後はややバタバタしていると自分でも思う。美と倫理の問題で、美には倫理と相反する面もあると思う。主人公が美を追求すると、倫理に反する面も出てくる。そこから新しい倫理も生まれてくるのではないかと考えた」とのべた。
佳作の宗澤亮「ピエロ」は北村隆志氏が報告した。北村氏は「総合格闘技の試合の臨場感、場面描写がずば抜けている。主人公が格闘技にのめり込む理由が中学生の時に母親から受けて『嘲笑』にあることも、簡潔に描かれてよくわかるようになっている。表舞台だけでなく、控え室でのいざこざや、敗者の哀れな姿も捉えて、格闘技の世界を多面的に描いている」と報告した。参加者からは「試合の臨場感リアルに描かれている」「身体感覚がよく描かれている」「母との関係がもう少し書き込みが必要では」「主人公がみた母の姿として、これでよかったのでは」などの意見が出された。
作者は「以前に書いたときは母のことだけを中心に書いていた。今回は限定的にした。母親像をどう深めるかは、今後の課題だと思っている」とのべた。
同じく佳作のねむりゆら「ゆるやかに明けゆく」は青木陽子氏が報告した。青木氏は「不登校と非正規労働を材料に、なかなか浮かび上がれない社会で、一所懸命に生きる人々の姿を、読みやすい素直な文章で綴っている。問題の指摘や抗議の意を声高に叫ぶのではなく、弱者に寄り添って緩やかに描き出している。ただ、登場人物の造形が甘いように思う。今後一人ひとりの人間を、個性を大事に掘り下げることを期待したい」と報告した。参加者からは「中学生からの引きこもりだが、悲壮感がない。家族もゆったりと対応している」「他者とのコミュニケーションと、働く中で進んでいくラストがよかった」など出された。作者は都合により欠席だった。
(高野裕治)