「作者と読者の会」
四月号「次世代特集」の「作者と読者の会」は、三月二十七日(金)に、齊籐航希「東風のかたり」、森本けいこ「親でも救えないけれど」の二作品を取り上げて行われた。十一人が参加。司会は乙部宗徳氏。
「東風のかたり」は昨年の第二十二回新人賞受賞後第一作である。岩渕剛氏が報告した。岩渕氏は物語のストーリーを解説した後、作品の焦点はどこにあるのかについて「先住民族が入植者から圧迫を受け少数者に追いやられていく中で、それまでの世界の崩壊していく様子を作品から読み取ることができる。一方入植者の世界にも感情のもつれがあり、人と人の対立がある。そのような人間世界のありようを、距離をおいて見つめようというのが作品の底流にあるのではないか」とのべた。参加者からは、「アイヌを想像するが、具体的な民族を出してはいない。そのことで普遍性が出ているのではないか」「寓話的な物語と読んだ。何が言いたいのか分かりづらいところもあるが、抽象的に書いて、どう読むかは読者に投げかけているように思われる」などの意見が出された。作者は仕事の都合でオンラインで直接に話せない場所からの参加であったが、最後にチャットで「幽体的なものを風に感じていて、その視点から一つの風景を描いてみようと試みた。対象や事態に完全には理解・認識が届き得ないという現実を乗り越える存在として風を設定して語らせてみました。いわゆる『神視点』としました」とのべた。
「親でも救えないけれど」は熊﨑徹典氏が報告した。熊﨑氏は作品のあらすじを四章に分けてていねいに説明した後、「SNSでのいじめという現代的な問題に取り組んだ意欲作。Xに排外主義的言説が溢れていたり、本来は人間の創造活動を豊かにするために存在するAIが悪用されている実態が描かれている。また親から自立し社会の一員になっていきたいという高校生の主人公の成長も上手に描かれている」と感想をのべた。参加者からは「高校生の主人公が社会と繋がり成長していく姿がいい。若者が不安を感じ、何とかしたいと立ち上がっていく、みずみずしい感性が若者らしくていい」「Xを使って今話題になっている問題をとおして、交流し、成長していく姿に感動がある」などだされた。作者は、仕事の都合で欠席であった。
(高野裕治)
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