「作者と読者の会」 2026年03月号



                  「作者と読者の会」

三月号の「作者と読者の会」は、二月二十七日(金)に、柴垣文子「あらかし」、田本真啓「椅子なき僕らに降る雪は」の二作品を対象に行われた。十八人が参加。司会は乙部宗徳氏。

 「あらかし」は宮本阿伎氏が報告した。宮本氏は作者の紹介、作品の内容を引用も含めてていねいに説明、解説をした。その上で作品について「同年齢同士の人間関係を軸にすすむ話は精緻な味わいある文章で描かれている。気候変動、大型開発によって壊されてゆく里山の自然、人間の豊かな暮らしが保証される自然をどのように守るかという主題に合わせて、世代間の交流と連帯が描かれ追求されている。作者の新しいワールドが開けたことに勇気づけられた思いがした」と報告した。参加者からは、「親近感と勇気を与えられた作品」「孫娘との交流が心温まり、感動した」「自然描写がすばらしい。自然の力には感動させられる」など出された。作者からは「二年前に友人が入院した同室に、熱中症で倒れて意識が戻らない人がいた。身近に気候変動があることを実感した。こんな地球に誰がした! と、その時のことが忘れられず小説にした」とのべた。

 「椅子なき僕らに降る雪は」は木曽ひかる氏が報告した。作品内容について説明をした後、「心打たれる作品だった。生き辛さ、生きる意味が問われている作品。生と死を書くことで、生の側に踏みとどまる『僕』を肯定し、降る雪ははかないが、両親の愛情を感じて小説を書いていこうと決意するところに、希望を感じることができる。方言の使い方も、朴訥とした感じで効果的だ」と報告した。参加者からは、「現代社会を椅子にたとえているタイトルがいい」「現代社会で苦しんでいる若者を椅子取りゲームで表わしているところに、自分の就職活動時代を思い起こした」「若者の居場所がない生き辛い姿に胸がつまらされた」などの意見が出された。作者は「自分の文学活動を振り返って、初心を忘れないようにと思って書いた。自分のありのままに近いだけに、リアリズムでそれを書くのには勇気もいった。椅子を取り合う現代で、レールから外れることがいかに過酷なことか。ドロップアウトした人たちのことが書けるように挑戦をしていきたい」とのべた。

                          (高野裕治)
   

 
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