「作者と読者の会」
七月号の「作者と読者の会」は、六月二十七日(金)に行われた。取り上げた作品は、草薙秀一「人生の本懐」とさやま★みきお「カラスの一族」の二作品。十二人が参加。司会は乙部宗徳氏。
「人生の本懐」について牛久保建男氏が報告。牛久保氏は作品の内容を述べ、作品の大事だと思う点として「非人間的な状態におかれている子どもたちの姿を見て胸を痛め、学生時代のみずみずしい感受性の再現を感じ、当時自分が民青同盟や共産党への誘いを断ったのは臆病で打算的だったと自省し、自分の信じることのために生きることが真実の人生ではないか、と考えるにいたる姿がよく描かれているところにある」と報告した。
参加者からは、「同じ書き手として、どうやってここまで取材したか、どんな苦労があったか知りたい」「企業の中での葛藤や退職後共産党に入党までの主人公の葛藤が納得できるかどうかが問題ではないか」などの意見がだされた。
作者は「調査はしたが、取材は特別していない。モデルもいない。想像力を発揮して書いてみた。海外特派員は注目していて、新聞の切り抜きもしているので、そこから想像した。今後も意欲的な挑戦をしていきたい」と述べた。
「カラスの一族」については青木陽子氏が報告。青木氏は作品内容を説明し、「見つめられているのは人の死。独り暮らしの高齢者と、その一族の血縁関係。カラスを効果的な脇役に使いながら、高齢者で、それほど遠くないところにある死を深刻ぶらずに素直に受け止め、妻の係累の死に対応する姿を淡々と描いて奥行きのある作品である。少しひねった表現、とぼけた風の表現なども生きている」と報告した。
参加者からは「今の時代の一つの象徴、典型的な姿を描いている」「カラスの使い方が生きている」「にじみ出てくる表現、描写が生きている」などの意見が出された。
作者からは「年に二作くらい書いてきたが、改作したことはなかった。今回それも大切だと感じた。カラスの生態に興味があって書いてみたかった」と述べた。
(高野裕治)
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