「作者と読者の会」 2023年04月号



                  「作者と読者の会」

四月号の作者と読者の会は、三月二十四日(金)に行われた。参加者はオンライン参加を含めて十三 人であった。

 一作目の星加邦雄作「遺された写真」は、青木陽子氏が、〔構成〕〔主題と内容〕〔特徴〕〔人物の描き方〕〔気になった点〕にまとめられたレジュメに沿って報告。章立てされているわけではないが、一行空いている毎に十に区分し、視点人物、客観視点(語り手、登場人物)を整理され、短編では、名前を与えられた登場人物はできるだけ少なくという通例に反して名前をもつ登場人物が三十人近い作品の特徴に触れられた。

 初めての作品で初登場という作者は、憲法を守るという長い市民運動の中で、地元の鉾田飛行場についての記述がほとんど正確には残されていないことを知り、登場人物をあえて実名で記すという強いモチーフになったこと、市民から寄せられたたくさんの古い写真の写真展を開催する中で、中山歯科医院の長女照子さんから「遺された写真」を託され作品が生まれたことを述べ、次作品につながる書きたい材料がまだあるので書き続けたいとあった。

 二作目の原健一作「ナージャの手紙」は、風見梢太郎氏が、八章に分けられたストーリーの要点を章毎にまとめたレジュメに沿って報告し、感想、批評と続けた。ウクライナ戦争のことは現在進行中のことでもありなかなか小説にならないが、よくぞ書いてくださったというのが第一の感想と述べた。そのことは参加者のほとんどが思っていることでもあり、続く九人の発言にも表れていた。作者の豊かな人生から多岐にわたる大切な問題が書かれており、一読しただけではわかりにくいところがあるがそれぞれ強い関係性を持っていて、ウクライナ戦争をどう見るかについて一石を投じる重要な作品、と続いた。作者自身の日常生活のあれこれから見えたり、思い出したり感じたりすることが、大きな世界的な問題につながっていることが分かる作品であること。「世界は戦争をしている場合ではない」「戦争の勝ち負けよりも大切なことは人を殺さないことだ」というメッセージを、作者の長引く腰の痛みに象徴して書き上げた作品だと思うなどの感想があった。

 作者は、この会だけでなく支部内外のいろんな方からの意見を聴いたが、このような大きな問題を扱うには四十枚では書けないのではないかということがあった。つい先日、沖縄本島だけでなく西南諸島石垣島、宮古島での自衛隊のミサイル基地強化の現実を知る機会があったが、作品を書く前に知っていたら異なる内容になったかもしれない。「未完の小説」という思いがある、と述べた。
                           (松浦佐代)

 
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