「作者と読者の会」 2014年9,10月号 



 九月二十六日(金)午後六時より文学会事務所で開く。出席者十一名。二十代の青年男女二人も参加。新鮮な息吹を吹き込んでくれた。
 今回の作品は、東喜啓「ポニー教室」を高橋英男氏が、永澤滉「赤い万年筆」を久野通広氏が報告した。司会は乙部宗徳氏。
 「ポニー教室」を、高橋氏は職員全てがライバルである、と考えていた木村が、松本を仲間として信頼し、労働者として成長していく物語の提示に成功している。しかし、所長山沢の描き方はどうだったか、等報告した。
 討論では、テーマを、ブラック企業に勤める若い労働者を作品にして、作者は新しい世界を目指している、また、取材を重視して、よく作品にまとめた、今の若い人たちの実態を反映している、課題としては、テーマがブラック企業で働く若い労働者の問題を描くのであれば、掘り下げが少し弱かったのではないか、パワハラを受けている松本と木村の最終章での解決は、どうだったのか、と意見が出た。作者は欠席だったが、若い労働者で、ブラック企業を書きたいと思い、青年を取材して書いたこと、書き直しの苦労等が文書で寄せられた。
「赤い万年筆」について久野氏は、評価点として、原発反対の立場からではなく、原発推進の側から描いている挑戦作であること、原発輸出プロジェクト参 入をめぐる杉原武志の葛藤にリアリティーが感じられるが、主人公瑤子にリアリティーが感じられない、等の報告をした。
討論では、若い二人は「スケールが大きい。わくわくしながら読んだ」、他の参加者からは、作品を読み終えて充足感があった、課題として、タイトルの赤い万年筆の展開が描き切れていなかった、群像が詰め込み過ぎていないか、長編小説に描くとよい、しかし、すごい挑戦作である、等の意見が出された。作者からは、原発を市民運動とは違う切り口から書きたかった、赤い万年筆は以前から書こうと温めてきたもので、このタイトルで面白く書いて見たかったが、結論に苦しんだと話された。
 
(青山次郎) 
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