「作者と読者の会」 2014年4月号 



 三月二十八日(金)六時より文学会事務所で開かれた。能島龍三作「青の断章」を牛久保建男氏が、仙洞田一彦作「朝ビラ」をたなかもとじ氏が報告した。司会は乙部宗徳氏。参加者は十四名。
 「青の断章」では、未体験な事を多くの資料や証言・調査をもとに特攻予備士官の心に立ち入って描写していることに皆感心した。
 死しか選べぬ若者は、親や家族のためと意味づけようとする。実態は潔く死ねずみっともなく泣いていた者もいたそうだ。『永遠の0』は特攻を美化はしないが、勇敢さを賛美した。「青の断章」は生き残って苦しむ若者の心情とともに上層部の意図を描いた。特攻は若者を大量に死なせ、講和や戦後処理を有利に導く目的があったと。対極的である。
 労働者あがりの兵と予備学生出身の主人公との交流はもっと描写すべきという意見と不要とに分かれた。
 「朝ビラ」では、人物の描写・特に心理や表情・台詞が印象的でうまい、流れるように読める文章や深刻さを皮肉やユーモアで包む表現法がすごいという評価が多かった。
 九九年に発表された作品の続編だが、管理職の組合加入に現実味はあるかが討議になった。加入理由は勤続三十年を無視した会社への反発心だけか、部下をリストラしたり家庭を犠牲にしたりしてきた自分の三十年を人間的に取り戻したいと思ったためか。主人公に退職を強い、自分は左遷にあう管理職に現実味があるとの声が多かった。
 
(栗木絵美) 
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