「作者と読者の会」 2009年12月号 



 十二月五日、二十人が参加して、「作者と読者の会」がひらかれた。とりあげた作品は、『民主文学』十二月号に載った、〇九年度支部誌・同人誌推薦の入選六作品のうちから、最優秀作「新任教師」松本喜久夫、「おとうとの生まれた日」木村康子、「星降る夜に」岩橋智の三作。作者の木村さん、岩橋さんが出席。松本さんからメッセージが届いた。
 報告は旭爪あかねさん、司会は三浦光則さん。
 旭爪さんは、「新任教師」について、生徒を力でまとめようとした教師から、向き合う教師へと変わっていくさまを、四つの各章で描き、とくに最終章で、窮乏ゆえに身を崩した母と子によりそい、ともに歩もうとするところが感動的で、演劇的手法だと思った。
 「おとうとの生まれた日」は、家族へのいとおしさにあふれている。小説としても、削るところ、加えるところ、直すところのない作品。未佐子が義父に親しさをおぼえるところが印象的。
 「星降る夜に」は、遠く去った高校時代、主人公の「俺」は天文部員。ある夏の夜から明け方へかけての校舎屋上での観測撮影会が舞台である。先輩、先輩と、「俺」に差し入れなどもってくる下級生の杏子との、恋でもなく、友情でもない、そのあわいが描かれており、ナイーブな作家だと思った。
 参加者の発言を紹介すると、
「新任教師」──「こわがられる教師になれとベテランにいわれるままだが、理想はないのか」「理想を抱いて教師になっても、管理的になる教師が多い」「保健室の先生の子どもを知ることが大事という話は、彼の心に響いた」「彼のめざめが早急すぎる」「教師像がパターン化してはいないか」「三十五年前、新任のとき生徒になめられて困ったが、教職員組合が助けてくれた」
「おとうとの生まれた日」──「薪でお湯を沸かす、うちで出産する、お弁当を持って来られない子がいる、上履きを盗まれたなど、敗戦直後の世の中とくらしがわかる」「貧しいけれど、母の具体的で新鮮な愛情で育てられた未佐子の賢さ、けなげさに泣けた」「戦争で天涯孤独の義父が、わが子の誕生をよろこんでいるところまで筆が及んでいるのには感心した」
「星降る夜に」──「若い日の胸の底にある忘れられない出来事を小説にしたことで、ああお前もか、となるところがいい」「いっしょに見た明け方の流星。杏子の早世で、主人公の思いはいっそうつよい」
 など、感慨深い参加者の話はつきない会となった。
 なお、閉会後、「入選者を囲む集い」が開かれ、交流を深めた。
(柏木和子) 
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