「追憶のとき」 能島龍三 車で故郷の群馬に向うと、郷土の詩人、萩原朔太郎の詩の一節が浮かんだ。 「妹をよろしく!」 須藤みゆき 誰のものでもない。誰のためでもない。私の三十年は、私のためにあったのだ。 「病室にて」 橘あおい アキレス腱断裂で入院した彩華に、同室の晴美が亡くなった弟のことを話し始めた。 「ある瓦解」 橘 あおい 介護老人保健施設の入所者、通所者の暮らしは変化が乏しかった。 「水槽の爺」 仙洞田一彦 歩くことは健康にいいと自分に言い聞かせて、部屋の片付けをせずに散歩に出る。