日本民主主義文学会第23回大会宣言

 私たちはいま時代の大きな転機にいます。大企業の無慈悲な「非正規切り」に対して、非正規労働者たちが反撃に立ち上がり、短期間に五千人が労働組合に加入するなど、近年にないたたかいが広がっています。小泉構造改革によってたまりにたまった国民の不満と矛盾は、衆参のねじれ国会を作り出しました。政府・与党は、首相が次々政権を放り出し、怖くて解散にも踏み切れないという崖っぷちに立たされています。
 ちょうど二年前の大会宣言は、小泉人気を受けついだ安倍首相の「美しい国」の戦前回帰路線と、ワーキングプアの増大に危機感を表明しましたが、当時と比べて世論も国会も様変わりの状況です。
 振り返れば『蟹工船』が発表された一九二九年は世界大恐慌の年でした。八十年後の現在、大恐慌以来といわれる世界不況と『蟹工船』ブームが同時に起きたことは、歴史の大きなサイクルが一回りしたことを感じさせます。
 八十年前の歴史的岐路のときは、戦争か平和への道かをめぐって激しくたたかわれました。今日もソマリア沖への自衛隊派兵や「憲法改正手続き法」の具体化など憲法改悪につながる動きはいささかも軽視できません。しかしもう一方で、九条の会を中心とする運動は改憲反対が多数派になるまでに世論を変え、オバマ米国大統領は初めて核兵器廃絶をめざすと宣言するなど希望ある変化も生まれています。
 私たちはいまこそよく時代を見つめ、変化をとらえ、描くことで文学の力を示していこうではありませんか。そして文学に携わり現代に生きる者として、きたる総選挙には政治を変える好機として重大な関心を払うものです。
 大会ではこれまで文学運動を担ってきたベテラン世代とともに、豊かな人生経験を踏まえて加わってきた人たちや、運動の新しい息吹を感じさせる若い世代の発言が多くあり、力強い未来の可能性を見ることができました。
 私たちは今大会での成果を土台に、民主主義文学運動に課せられた役割を自覚するとともに、今日の社会が求める切実な主題に大胆に立ち向かい、昨日までの自己に満足しない、次なる創造・批評の峰をめざして研鑽しあうことを決意します。そして創造と組織活動全体の前進を勝ち取るために、互いに励まし合って力を尽くしましょう。

   2009年5月10日
 
日本民主主義文学会第23回大会   


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