2022年 各地の多喜二祭
 愛知多喜二祭の報告◆ 
    「人間の尊厳と小林多喜二」をテーマに第4回愛知多喜二祭を開催

 三月六日、愛知多喜二祭実行委員会は第四回愛知多喜二祭を名古屋市内で開催し、会場とリモート両方で八十三人が参加しました。今回はコロナ禍のもとで、一人ひとりの国民の尊厳が問われる事態、特に女性が困難に直面する状況が続く中で、今回のテーマを「人間の尊厳と多喜二」としました。
 開会挨拶で古川大暁(ひろあき)民主青年同盟県委員長は、「いま『党生活者』を読んでいる」と前置きして、コロナ禍のなかで青年の生活が困難になった。バイトがなくなり、自力でできたことができなくなった。食糧支援などの活動で民青同盟員が増えた。青年は戦争反対や自分のできることをしたいという気持ちがわきおこっている、と述べました。

音楽家の森悦子氏は、「多喜二が好んだ音楽」と題して「タイスの瞑想曲」などバイオリンを演奏して多喜二の人間味を表現しました。

 講演の尾西康充氏(文芸評論家・三重大教授)は「ロシアの侵略行為を多喜二なら痛烈に抗議するだろう。今日多喜二祭を行う意義はウクライナ侵略に抗議する上でも重大である」と述べ、ハリコフ会議(一九三〇年十一月)での国際革命作家同盟で多喜二の『工場細胞』が絶賛されたことを紹介。田口タキと伊藤ふじ子のことに触れ、今で言うジェンダー平等に見識があり、多喜二のことを田口タキは「多喜二兄さん」、伊藤ふじ子は「やつがねえ」と呼んでいた。みなさんはどう呼んでいますか。「うちの家内、うちの主人はだめですよ」と強調。また、「都新聞」に連載された「新女性気質」(のちに「安子」と改題)の中で、女が男性から解放されるには経済的な独立であり、その根底にはプロレタリアとしての解放が必要である。だから、女が本当の女として存在するためには、プロレタリアの解放をまって初めて考えられる、と作中で山田がお恵に語っている。多喜二の女性観が現れている作品だが、前編で終っている。その後書かれる予定であったが、虐殺されたことで書かれなかった。

 会場の質問に答える形で多喜二は当時一流の『中央公論』、『改造』に小説を発表していた。多喜二の作品を載せた編集者の勇気に敬意を持つ。しっぺ返しとして横浜事件につながっていくことに言及。最後に『小林多喜二の手紙』(岩波書店発行)を紹介しました。

 集会の最後に、ロシアのウクライナ侵略を告発する抗議文を決議しました。
県内のコロナ感染者数の高止まりが続く中で参加をためらう人も少なくありませんでした。会場を飾った「美術集団8月」による絵画、「華原の会」による生け花を含めて集会全体を収めたDVDの普及にも取り組みます。
                (本村映一)